じゃがアリゴの元ネタは本場フランス料理?アリゴとチーズ "トム フレッシュ" を解説
今宵も奥深く濃密なチーズの世界へ、ようこそお越しくださいました。
この時間は、普段聞きたいけど聞けないチーズの素朴な疑問をわたくし、DJゴーダが丁寧にご説明いたします。
本日もチーズラヴァーの皆さんよりたくさんのお便りを頂いております…。
それでは早速、本日のお題に参りましょう。
じゃがアリゴの元ネタは本場フランス料理?アリゴとチーズ "トム フレッシュ" を解説
ラジオネーム "Sunshineのひよこ" さんからのお便りです。
「こんにちは、キッチンで働いているのですが、少し前に流行った “じゃがアリゴ” を思い出すことがあります。当時、仕込みの合間にやってみようと話題になっていました。
気になって調べてみたら、本場のアリゴは “トム フレッシュ” というチーズを使うそうですね。本場のアリゴについて、トム フレッシュ について教えてください」
チーズラヴァーズの皆さん、こんばんは! 今宵も始まりました「Cheese FM」のお時間です。
気づけば2025年も残りわずか。
12月の街中は、ちょっと独特な焦燥感がありませんか?年末の準備なのか、忘年会シーズンだからなのか、クリスマスなのか… 私は今年も「あ~、今年も終わってしまう…」という、どこかノスタルジーな気持ちになっています。
そしてこういう時期って、温かい料理がひときわおいしく感じられる季節ですよね~。特にチーズはいまが繁忙期の真ん中。冬の寒さから身体をいたわりつつ、チーズの力でなんとか乗り切りたいところです。
さて、忙しない12月ですが、今日は一通お便りが届いています~。今回のお便りは、お~、“じゃがアリゴ” についてですね。懐かしい!ラヴァーズの皆さんは “じゃがアリゴ” って覚えていますか?
お菓子のじゃがりこに、さけるチーズと熱湯を加えて混ぜるだけで伸びるポテトができる、手軽で楽しいレシピですね。これがSNSで流行ったのは最近だった気がするんですけど、確認したら2019年…。もう6年前か…。

じゃがアリゴの元ネタ:本場フランスの「アリゴ」
ここからは、じゃがアリゴの本家ともいえるアリゴ(Aligot)のお話をしていきましょう。
アリゴは、フランス中南部のオーブラック地方という地域で古くから食べられている郷土料理です。もともとは巡礼者に振舞われていた温かい料理で、マッシュポテトに大量のチーズを混ぜ込んでつくる、とってもシンプルで力強い一皿です。
最大の特長は、木べらですくい上げたときのあの“粘りと弾力を伴った力強い伸び”。まるで塊がそのまま一本の筋になって持ち上がるような、あの独特の粘りです。絶妙な粘性としなやかさが混ざり合い、ぐいっと伸びて、戻って、また伸びる。これこそが本場アリゴの醍醐味ですね。

味わいはとても素朴で、じゃがいものほっくりとした甘さ、チーズのミルク感と優しいコクが合わさって、身体の芯から温まるような風味になります。
重すぎず、軽すぎず、“素朴なのに満足感のある味”……それがアリゴの魅力です。本場では肉料理の付け合わせとしても定番ですね!
さてさて、このアリゴという料理、実は使うチーズが決まっていることを知っていますか?
じゃがアリゴのように、身近なチーズや伸びるタイプのチーズで代用されることも多いのですが、本場フランスでは「アリゴにはこのチーズしか使わない」と言ってもいいくらい、定番のチーズが存在します。
アリゴのあの力強い粘り、リボンのように伸びる独特の食感。あれは偶然ではなく、ある特定のチーズだからこそ生まれる性質なんです!!
ここからは、本日の主役「トム フレッシュ(Tome fraîche)」 のお話に移っていきましょう。
じゃがアリゴの元ネタ:本場フランスの「アリゴ」
ここからは、アリゴの“縁の下の力持ち”ともいえるチーズ、「トム フレッシュ(Tome fraîche)」について詳しくお話したいと思います♪
名前だけ聞くと馴染みがないかもしれませんが、これは アリゴに欠かせない、ほぼ “専用” と言っていいチーズ なんです。

●未熟成のセミハードチーズ
トム フレッシュは、フランス・オーブラック地方で作られるチーズで、大きな特徴は 熟成させる前の段階のフレッシュな状態で使うという点にあります。外皮(表皮)がまだ形成されておらず、組織はしっとりとして、セミハードながら柔らかさの残る状態。まさに生まれたてのチーズというイメージです。
●ミルクの甘さが強く、香りはやさしい
未熟成のため、香りは穏やか。クセがなく、ミルクの甘さがストレートに感じられます。火を入れるとふわっと甘い香りが立ち上がるのが特徴。アリゴが素朴でやさしい味わいになる理由は、このチーズの “穏やかさ” によるところが大きいんですね!
●最大の特長、驚異の「伸び」
トム フレッシュが特別なのは、なんと言っても加熱したときの伸び方。未熟成ゆえにたんぱく質の構造がまだ硬くなりすぎておらず、熱が入るとしなやかにほどけ、ぐいっと粘り、しっかり強く伸びる性質を持っています。アリゴの “力強いリボン状の伸び” は、まさにこのトム フレッシュの特性が生み出しているものなんです。
●日本で買えない理由は?
スーパーはもちろん、チーズ専門店でもトム フレッシュはなかなか購入できません。トム フレッシュは水分が多く、熟成前であるため保存性が低いことから、現地でも “料理に使うために作られ、そのまま地域内で消費される” ことがほとんど。そのため、輸出量も非常に限られています。日本の市場で見かけないのは、そうした背景からなんですね~。私はぜひとも食べてみたいです…。
さて、今回のラジオもそろそろ終盤となってきました。じゃがアリゴの元になった、アリゴという料理。そしてアリゴに欠かせないトム フレッシュ、皆さんいかがでしょうか?
一見シンプルに見えるアリゴですが、その料理の背景には、地域の食文化と、チーズそのものの性質がしっかり息づいていることが分かって面白いですね!
今年も慌ただしい12月ですが、食卓にアリゴのような温かい料理がひとつあるだけで、気持ちが少しやわらぎませんか?私は今年中に本場のアリゴを食べに行きたいですね……、日本でですけど。
それでは、今夜の「Cheese FM」はここまで。
来年もチーズの世界を、ゆるりと語っていきますので、ぜひお楽しみに!
皆さま、良いお年を!! See you again!!

