
チーズラヴァーの皆さん、“CHEESE FM”のお時間です。
今宵も奥深く濃密なチーズの世界へ、ようこそお越しくださいました。
この時間は、普段聞きたいけど聞けないチーズの素朴な疑問を
わたくし、DJゴーダが丁寧にご説明いたします。
本日もチーズラヴァーの皆さんよりたくさんのお便りを頂いております…。
それでは早速、本日のお題に参りましょう。
ラジオネーム"オランダ観光希望さん"さんからのお便りです。
「DJゴーダさん、こんばんは。チーズは1年中スーパーに売っていますが、これぞ旬!のような季節を代表するチーズはあるのでしょうか?」
なるほど、今日のお題はチーズの季節性ということですね。
もちろんチーズにも旬はあります。例えば、カマンベールチーズやゴーダチーズは1年を通して購入できるのでなかなか季節性に気付きにくいかもしれませんが、実は海外の限定された地域で作られているナチュラルチーズには季節を反映したものが多くあります。
それでは、今回はチーズラヴァーで知らない人はいないと言っても過言ではない、秋・冬を代表するチーズ「モン・ドール(Mont d'or)」のお話をしましょう!
モン・ドールは、フランスとスイスの国境のジュラ山脈一帯で作られる、未殺菌の牛乳を原料としたウォシュタイプのチーズです。大きさは直径約15㎝、硬さ5㎝ほどの円盤状で、チーズがとても柔らかいので "エピセア" という木の樹皮で側面を囲っています。
モン・ドールの何がそこまでチーズラヴァーを惹きつけるのか疑問に思うかもしれませんが、やはりその味と柔らかさが格別なんです! 熟成が進むと中身のチーズはスプーンですくえるくらいトロトロになって、なめらかな舌触りとクリーミーな味わいがもうたまらなく美味なんですね。
世界のチーズラヴァーズは、このモン・ドールが販売される秋の終わりを毎年心待ちにしています。
え? そんな人気のチーズなら1年中買えるんじゃないの?と思ったでしょう。
残念ながらモン・ドールは秋・冬限定で、8月15日から翌年の3月15日までと生産期間が決められています。熟成期間(最低21日間)を含めて考えると、購入できる時期は9月10日から5月10日までということ。8月15日から作られたものが9月下旬に日本に入り、店頭に並ぶとラヴァーズは秋の終わりを感じるということです。11月になるとボジョレー・ヌーヴォーも解禁になり、ワインとの相性抜群なモン・ドールはクリスマスに向けて人気のピークとなるんですよ!
なぜ、モン・ドールは生産期間が決められているのでしょうか?
それには、"フランスで最も愛されている"とも言われる大型ハードチーズ「コンテ」が背景にあります。
コンテの生産地は、モン・ドールと同じくフランスのジュラ山脈一帯。コンテはフランスで消費量№1の大人気チーズなので、この地域で春から秋にかけて搾乳されるミルクは全てコンテ作りに使われます。
では冬はどうでしょう? 冬になるとジュラ山脈は雪が深くなり、とれたミルクをチーズ工場へ運ぶことができなくなってしまうので、酪農家は自分たちでチーズを作っていました。また、春夏の時期と比べると、牛が出せるミルクの量は減り、1軒の酪農家でコンテを作れるほど大量の牛乳は手に入りません。そこで熟成期間が短くて、少ないミルクで作ることができるモン・ドールが作られ始めたんです。
モン・ドールはコンテが作れないときの代わりだとわかると、季節限定なのが納得できます。チーズの誕生秘話って、生産地の状況やチーズ作りの環境等が関わっていて面白いですよね。
まだまだお話ししたいことはいっぱいありますが、残念ながら終わりのお時間に近づいてきました。
どうでしょう、秋・冬限定の「モン・ドール」食べてみたくなりましたか?
室温に戻して、トロトロな中身をスプーンですくい、バゲットや野菜につけて食べるもよし。
チーズに白ワインを少々混ぜ、みじん切りのにんにくとパン粉をふった後、オーブンで焼いてチーズフォンデュのように食べてもよし。
ぜひぜひみんなで季節の訪れを楽しみながら食べましょうね。
それではまた次回お会いしましょう。See you again!!