映画から食卓へ:『Holy Cow』で考えるコンテチーズの魅力
今宵も奥深く濃密なチーズの世界へ、ようこそお越しくださいました。
この時間は、普段聞きたいけど聞けないチーズの素朴な疑問をわたくし、DJゴーダが丁寧にご説明いたします。
本日もチーズラヴァーの皆さんよりたくさんのお便りを頂いております…。
それでは早速、本日のお題に参りましょう。
映画から食卓へ:『Holy Cow』で考えるコンテチーズの魅力
チーズラヴァーズの皆さん、こんばんは! 今宵も始まりました「Cheese FM」のお時間です。
皆さんはフランス東部ジュラ地方を代表するハードチーズである“コンテ(Comte)チーズ”を題材にした映画が上映されているのはご存じでしょうか?
実は2025年10月10日(金)から “HOLY COW” というフランス映画が日本で上映されているので、会社の同僚を誘って、さっそく見てきました~!
今回はその感想と、コンテチーズの解説をしていきたいと思います。

“HOLY COW” は2024年に公開されたフランス映画で、舞台はフランス東部のジュラ地方。
主人公は18歳のトトンヌという青年で、チーズ職人だった父親の死をきっかけに7歳の妹の面倒を見ながら、生計を立てる方法を模索していきます。 そんな時、コンテチーズのコンテストで金賞を受賞すると、3万ユーロの賞金が出ることを知り、コンテチーズを自力で作ろうと奮闘するお話です。
ここからは私の感想になりますが、ネタバレがない程度に抑えてお話しますね。
まず映画で最初に飛び込んでくるのが、ジュラ地方の広大な景色!大地に映える緑がとても美しく、こんなに穏やかな場所で牛が育ち、チーズ作りが営まれているんだと思わず引き込まれてしまいました…。
下の写真は実際のジュラ地方です。映画に出てくる農村も時間がゆっくり流れているような穏やかさが感じられました。本当にきれいな場所なので、人生に一度は行ってみたいですね。

さて肝心のコンテチーズについて。
主人公のトトンヌは独自にコンテチーズづくりを始めます。実家がチーズ工房なので、残っていたコンテチーズ用の銅張りの大きな釜を外で吊るして生乳の加温を始めるのですが、ある程度チーズの知識がある身からすると、映画を観ていて〈あれ、コンテってAOPだよな~…〉とか思うワケですよ。
AOPは原産地名称保護制度で、“決められた地域と伝統製法で作られたものだけが、その名前を名乗れる” EUの制度です。チーズ工房そのものもAOPの認証対象になっているので、独自でコンテチーズを作っているトトンヌの未来が見えてしまって、内心ハラハラしながら映画を観ていました。
トトンヌの動きはさておき、実際にコンテチーズで使われる銅窯や職人さんたちの様子、コンテチーズがずら~っと並ぶ圧巻の熟成庫の様子には目を奪われました!

話は少し変わりますが、私は “HOLYCOW” を公開日に見に行きまして、放映後にコンテチーズの試食ができるイベントに参加してきました。
イベントでは村瀬美幸さんがご登壇され、試食のチーズを食べながらコンテチーズの解説を聞くという、たいへん贅沢な会でした~!!


試食でいただいたコンテは、18ヶ月熟成(写真右)と21か月熟成(写真左)の2つです。
“HOLY COW” のなかで金賞を受賞したコンテが「花の香りがする」と評価されていて、これは花が咲いている牧草を食べた牛から採れたミルクで作るから花の香りがするそうです。実際の試食でも、花が咲いている時期のコンテチーズをいただきました。映画とリンクしていて、なんという贅沢な演出でしょうか…。
写真でもチーズの色が異なるのがわかると思うのですが、これは牛が食べる餌の影響だそうです。こんなにも違うものなのか!と驚いてしまいました。
フレーバーや香りも違いが明白で、花が咲いている時期のコンテはナッツのような栗のようなホクホクさと鼻から抜ける爽やかな香りが特徴的でした。
逆に干し草の時期のコンテは、熟成が長いこともあってネットリとした食感でマドレーヌのようなバター感を感じました。
今回のイベントで、コンテチーズは酪農家とチーズ製造者と熟成士が一丸となって大切に作られているチーズであることを再認識することができて、チーズを口に運ぶ瞬間にコンテへの想いを受け取ることができました。本当にとっても良いイベントに参加することができて光栄です!
さて、そろそろお別れのお時間ですね~。
今回は映画 “HOLY COW” の感想からコンテチーズの紹介をしました。映画を観て、イベントに参加して、コンテチーズってフランスの人の心を象徴する食品なんだな~って強く感じました。
これからもコンテチーズを大切に大切に食べていこうと思います。映画が気になった方は上映中にぜひ見に行ってみてください。
それではまた来月! See you again!!

